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ボランタリズム研究(Vol. 3)
待望の最新刊!

特集:市民セクターが挑む、社会的孤立の抑制・解消への道程
編集:大阪ボランティア協会ボランタリズム研究所
B5判 114頁
発行年:2018年12月27日
ボランティア・NPO:市民活動の理論と実践の対話をめざした「ボランタリズム研究所」が編集する研究雑誌。

【編集】
大阪ボランティア協会 ボランタリズム研究所
大阪ボランティア協会の調査研究機能を特化させ開設した研究所で、日本の市民活動あるいはボランティア活動を支える原理や理念のさらなる追求と、それらの実践的プログラムの開発など理論的科学的な研究を推進しています。
社会福祉法人大阪ボランティア協会 ボランタリズム研究所編 



【巻頭言】
市民セクターが挑む、社会的孤立の抑制・解消への道程
― 市民セクター自身の「社会的孤立」を超えて ―

ボランタリズム研究所 運営委員長
岡本仁宏

〇 社会的孤立と「個人としての尊重」

一人でいることと、社会的孤立とは、違う。
私たちは、一人でものを考えたり仕事をしたりする時間は重要だし、誰かに干渉されずに自分の人生を決める一人であるということも重要である。一人で静かに悲しみに浸る時間も、深く喜びをかみしめる時間も、必要だ。
けれども、社会的孤立は、周りから排除されたり、つながりを持つ機会を奪われ、誰にも関心を払われず孤立し、ついには人とのつながりを持つ意欲すら失っていく、一連の姿を意味している。継続的に攻撃されたり、傷つけられたりしても助けが得られない、そしてそんな中で人との関係を持つことを恐れざるを得なくなる場合もある。ほとんど物理的に攻撃され排除され、隔離され閉じ込められる場合もあるし、心理的に攻撃され排除され隔離され閉じ込められる場合もある。
現代日本で起こる、様々な領域の社会問題が、社会的孤立と関連している。否、たんに「関連している」、という以上の強い結びつきがある。貧困、差別、虐待、流浪、自殺、といった身近な生活の場での問題は、すべて社会的孤立が原因でも結果でもある、と言って言い過ぎではない。社会的孤立を見出せば、そこには必ず他の重要な問題があるし、生活上の重要な問題は必ず社会的孤立と関係している。

〇 コミュニティの再生、という「解決策」

社会的孤立が問題だという場合、つながりを作る、コミュニティを再生する、といった「解決策」が出されやすい。この点で、本誌のもととなった一連の研究会で明らかになった二つのことは、少なくとも確認しておきたい。
ひとつは、前提として、「つながり」の中で、「コミュニティ」の中で、排除されてきた側面に目を向けなければいけない、ということである。月に150時間を超えるような過労死の労働現場には、人を追い詰める「つながり」や「コミュニティ」がある。性的少数者を異常として排除するのは、学校の「仲間」や「教師」、家族の「つながり」であるかもしれない。外国人を排除するのは、日本人という「コミュニティ」であったりする。
だからこそ、前提に憲法第13条の「個人として尊重される」という基本的人権の視点を省いてはいけない。一人ひとりが、「個人として尊重される」ために、いかなる「つながり」や「コミュニティ」が必要かが問われている。時には、既存の「つながり」や「コミュニティ」からの救出が先決であり、そのうえでいかに別の新しい「つながり」や「コミュニティ」を作るかが課題となる。社会的孤立で苦しんでいる当事者に向かって、上(外)から「もっと外に出よう」というのではなく、迎え入れられる場=社会を作ることこそ、我々の課題でなければならない。
もう一つは、豊かな「つながり」や「コミュニティ」を蝕み圧力をかけている背景にあるものを視野に入れなければいけない。虐待やいじめを発生させる土壌を把握しなければならない。排除のメカニズムを発動させる背景、それはしばしば、大きな政治・行政・経済システムの構造的問題もあるかもしれない。それらを無視して、安易にコミュニティの「再生」を望むことは、現場の過度な頑張りを押し付け、新たな抑圧と排除に帰結するだろう。
もちろん、大きなシステムが変わればすべてが変わるというような楽観はあり得ない。けれども、法制度や資源の流れの優先順位の改革を、具体的な現場の奮闘から学ぶことによって構想しなければならない。創意あふれる現場の実践は、しばしばその現場を越えてシステムを変容させる力を持つ。

〇 市民社会セクターの連携にむけて

市民社会セクターの社会を変えるチャレンジが必要だ。個々の社会的孤立の課題を解決するために、市民セクターの連帯を意識的に作り上げることが必要ではないか、と考えて、私たちはこの研究会を始め本誌という成果を生み出した。個々の社会的孤立の課題には、それぞれの専門性をもち日々献身的に取り組むNPOや研究者たちがいる。それぞれの問題は奥深く、安易に「わかる」こと、「答えを出す」ことを許さない。しかし、本誌では、あえて横断的に問題を取り上げてその共通の問題状況と課題を析出させたい。その過程によって、社会的孤立の問題とたたかう市民社会セクターの連帯が生まれることを期待したい。


【目次】

第1章「子どもの貧困と孤立」
子どもの貧困というテーマ〜CPAOの活動 これまでとこれから / 徳丸ゆき子
「子どもの貧困」という隠蔽−釜ヶ崎の社会史から、格差と資本の構図に− / 桜井智恵子
解題 / 工藤宏司
第2章「障害者をめぐる孤立」
 「同情するならカネをくれ!」障害者の社会的孤立を解消する、カネと資源と権限 / みわよしこ
 障害者の貧困と孤立 / 吉永純
 解題 / 藤井渉
第3章「高齢者をめぐる孤立」
 高齢者の貧困と社会的孤立 / 藤田孝典
 高齢者の社会的孤立をめぐって / 牧里每治
 解題 / 牧口明
第4章「LGBTをめぐる孤立」
 LGBTをめぐる孤立〜実践者〜 / 近藤由香(コジ)
 LGBTのTをめぐる社会的孤立 / 東優子
 解題 / 永井美佳
第5章「児童虐待をめぐる孤立」
 児童虐待の孤立・再発防止支援への挑戦 / 宮口智恵7
 「つながる地域」「支え合う地域」をめざして〜児童虐待防止の立場から / 才村純
 解題 / 藤井渉
第6章「外国人をめぐる孤立」
 NGO神戸外国人救援ネットの活動から見えてきた外国人をめぐる孤立 / 村西優季
 外国人をめぐる「孤立」の背景と今後の可能性について / 田村太郎
 解題 / 永井美佳
「市民セクターが挑む、社会的孤立の抑制・解消への道程」全体趣旨文・開催記録

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