著者:岩永清滋・水谷綾
B5判並製 248頁 表紙カバー
発行年:2004年
「非営利」という特性ゆえ、NPOの会計・税務には固有のルールがあります。 本書は会計とNPOマネジメント、それぞれの最前線で活躍する2人の著者が協働、その理念から実践のための知識・スキルまでを深く、かつ分かりやすく詳説した待望の書です。 「ミッション=社会的使命を持って頑張る人たちを精一杯応援したい」という著者の思いが全編に込められています。
【解説】
「非営利」という特性ゆえ、NPOの会計・税務には固有のルールがあります。
本書は会計とNPOマネジメント、それぞれの最前線で活躍する2人の著者が協働、その理念から実践のための知識・スキルまでを深く、かつ分かりやすく詳説した待望の書です。
「ミッション=社会的使命を持って頑張る人たちを精一杯応援したい」という著者の思いが全編に込められています。
【目次】
はじめに 岩永清滋
本書を活用されるにあたって
目次
第1章 まずはNPOの理解から
1. NPOを資金面から理解する
1 特定非営利活動法人はNPOの一形態
2 ミッションもお金もNPOには必須
3 民間組織としてのNPOの資金・財源
2. お金のマネジメント~会計・経理は避けて通れない
1 NPO法人にとっての会計の目的とは?
2 経理担当者も知っておきたい「特定非営利活動促進法」の骨子
3 さらにもう一歩!理解しておきたい「NPO法」のあれこれ
4 あなたの組織の「定款」を、読んだことはありますか?
5 もう一つ忘れたくないこと~説明責任としての予算と報告
第2章 日常経理のマネジメント
1. 経理業務の手順と現預金管理
1 経理業務~その機能と役割
2 経理業務~日常、月次、年次でするべきこと
3 現金管理に必要なアイテム
2. 単式簿記で経理を始める~現金出納帳の作成
1 経理の基本中のきほん~現金出納帳の作成
2 預金・貯金の管理業務
3 単式簿記から計算書を作るために
3. 複式簿記で日常の会計業務を進化させる
1 賃借対照表と収支計算書
2 勘定科目の基礎を押さえる
3 複式簿記、はじめの第一歩は「仕訳」
4 転記をして、総勘定元帳を作成する
5 定期的な試算表の作成で財政状態をチェック
6 債権債務の決算整理
4. 決算をして計算書類を作成する
1 いざ1年の締めくくり~NPOの決算(年次決算)
2 固定資産と減価償却~考え方と計算法
3 商品管理~年度末には棚卸を
4 精算表の作成から計算書類まで~決算へ最後の詰め
第3章 NPOを収支計算書で見せる
1. アカウンタビリティとしての計算書類
1 そもそも計算書類は誰のためのもの?
2 どういう形態の収支計算書を作りたいですか?
3 事業別の明細や予算対比などを盛り込めば
4 事業の中身をより良く見せる計算書のコツ
5 他のツールの併用でもっと説明できる
6 税務署に提出する計算書
7 計算書の多様性と信憑性~「注記」という仕上げを怠らずに
第4章 NPO運営に伴う税金の基礎知識
1. 税金はNPOにとっても重要な関わりがある
1 税金とは何か?~複眼思考で理解する
2 ポイント!税金に関する重要事項
2. 給与や報酬の支払に伴う税金~源泉所得税
1 誰が支払う?源泉所得税
2 ポイント!源泉徴収事務の押さえどころ
3. 収益事業を行ったときの税金~法人税等
1 NPOの事業は課税?それとも非課税?
2 ポイント!収益事業の主な具体例
3 法人税と地方税の税率と計算方法は?
4 収益事業の申告と区分経理
5 住民税の減免を受ける場合の留意点
4. 課税売上となる収入がある場合の税金~消費税
1 消費税の仕組みをおさらいすると
2 課税取引と非課税取引~その分かれ目は?
3 消費税の計算方法と簡易課税
4 補助金、助成金など、特定収入の扱いは?
5 消費税に関する各種の届出書と留意点
第5章 NPOの計算書理解を極める!
1. 資金概念をつかんで計算書類作成を突破!
1 2面性なのに3つの計算書を作る?~NPO会計の難しさ
2 改めてNPO法の規定を点検すると
3 避けられない!「資金概念」の理解
4 計算書類の体系~作成方法と表示方法でさらに分けられる
2. 実践!精算表を使った計算書類の作成
1 設例と前提条件
2 運転資金概念で、計算書類を作成すると
3 現金預金概念で、計算書類を作成すると
3. 計算書類の体系~総まとめ
1 それぞれの長所・短所と具体的な作成の指針
第6章 Q&A NPOの経理実務で悩む・迷うこのポイント
Q 1. 【任意団体からNPO法人へ】NPO法人格取得!でも、任意団体時の財産はどうやって移行するの?
Q 2. 【法人設立後の税務申請】登記を終えた後の事務手続きに必要なものは、何?
Q 3. 【単式簿記と複式簿記】単式簿記から複式簿記に切り替える目安は?
Q 4. 【現金主義と発生主義】現金主義と発生主義の考え方の違いを教えて!
Q 5. 【事業費と管理費】「事業費」と「管理費」、その違いと区分けの仕方は?
Q 6. 【経費の按分】事業を掛け持ちしているスタッフの人件費はどう区分するの?
Q 7. 【事業間の内部取引】ある事業の通帳で他の事業費を立て替えたとき、事後処理はどうすれば?
Q 8. 【特別会計】特別会計は自由に作れるの?そのとき注意することは?
Q 9. 【固定資産】「固定資産」として管理するものは何?
Q10. 【減価償却】NPO法人にとって減価償却は絶対に必要?
Q11. 【NPOらしい会計】「それぞれの個性に合った会計を」を目指してはみたいけど、自分らしい会計って?
Q12. 【寄付金の取り扱い】寄付金を受けた場合の扱いや注意点について知りたい。
Q13. 【認定NPO法人制度】寄付金控除などの優遇措置がある「認定NPO法人制度」ってどういう制度?
Q14. 【給与と源泉徴収】ついに専従職員採用に!でも、新たに発生する業務は何?
Q15. 【給与の複合仕訳】預り金を含む給与の仕訳の方法、帳簿への記帳は?
Q16. 【有償ボランティアと税務】有償ボランティア(有償活動のメンバー)は労働者?それともボランティア?
Q17. 【受託事業の実費弁償方式】行政からの受託事業をした場合、法人税面での「実費弁償方式」というものがあるって聞いたけど、それは何?
Q18. 【青色申告】 青色申告って、何? その特典や要件を教えて!
Q19. 【印紙税】NPOが発行する領収書や契約書に印紙は必要?
Q20. 【借入金】お金を借りるとき、NPOが注意すべきポイントは何?
Q21. 【会計ソフト】NPOにピッタリな「会計ソフト」を教えて!
Q22. 【経理規定】NPO法人にも経理規定は必要なの?
Q23. 【インターネットによる情報収集】NPOや会計のことについてホームページサイトはある?
Q24. 【勘定科目・】勘定科目をきちんと理解するための押さえどころは?
Q25. 【勘定科目・】ビギナーのために勘定科目の主要項目を解説してほしい!
おわりに 水谷 綾
特定非営利活動促進法
参照文献
索引
はじめに
特定非営利活動促進法が成立して早くも6年が経ちました。同法により設立された特定非営利活動法人はすでに1万8千以上の数になりました。また法人格を持たずに行政や営利企業とは別の目的と内容を持った市民団体も数多く活動しています。
これらNPOの活動分野はわが国においてどんどん広がっており、今やなくてはならない一大勢力になっていると言っても過言ではないでしょう。行政サービスの民間への移行という規制緩和の流れとも相まって、この傾向はこれからますます加速していくものと思われます。
しかしながら、その流れがあまりに速すぎたこともあり、わが国に非営利活動がしっかりと根付いたと言えるかどうかは、多いに疑問があります。特にマネジメントという側面から眺めてみると、その土台があまりに貧弱なNPOが多いと感じさせられます。「ヒト」「モノ」「カネ」のすべてが常に不足して、少数のメンバーがただミッションを目指すという思いだけでがむしゃらにがんばっている姿をよく見ます。
私たちの見る限り、平俗的な言い方をすれば、彼らは本当に「いい人」たちです。しかし、「いい人」が「いいこと」をしているというだけで本当に良いのでしょうか。今後NPOがわが国においてしっかりと地に足を着けた地位を築き上げるためには、がむしゃらさだけではなく、合理的な考えと、しっかりした計画に基づいたマネジメントを身に付ける必要があるのではないでしょうか。
マネジメントの中でも特に会計の分野を苦手とするNPOの活動家が多いようです。会計は過去営利企業の世界で発達してきたツールであり、一方NPOの母体となっている市民活動は過去お金の世界と一番無縁のところに位置していたとも言えるので、確かにこのミスマッチは仕方がない一面を持っています。しかしながら、いくら非営利活動といってもその活動を継続してミッションを達成するためには、やはりお金が必要であることは否定できないでしょう。お金の動きがある以上は会計の知識がどうしても必要になるのです。
NPO向けの研修会の講師などをしていると、本当にNPOの実務担当者が困っていることを痛感します。彼らのためにNPOの会計と税務を解説する書物を提供することが急務だと感じていました。しかし私が接する担当者の中には、できる限り簡単な方法で答えだけを知りたいとする思いが強い人が多いことも事実でした。自ら行うNPOの活動の目標や方法については非常なこだわりとプライドがあり、独自性を存分に出している人たちが、こと会計と税務の話になると、途端に安易な雛形をほしがる態度を取ることについては、かねてから疑問に思っていました。もちろん時間がなく他の業務も兼務していることの多いNPOの会計担当者がそのような気持ちになるのは無理からぬ点もあるでしょう。
しかし、その都度誰かに聞いたり、雛形を無批判に真似するだけの方法を続けているだけでは、真の意味でNPOの会計と税務を習得できないでしょう。会計と税務の基本知識をしっかりと理解し、NPOの会計の目標を的確に定め、自分の頭で考える習慣を持つことが大切なのです。この最後の自分の頭で考えるという点は本当に重要です。自分で考える力を身に付けると、新しい局面で様々な応用が可能になりますし、何よりも日々の実務を、自信を持って行えるようになります。「分からない」とか「不安だ」とかの今までの日常が一変する実感を味わえるでしょう。
本書は、主にNPOの実務担当者のために、できるかぎり平易な文章で、分かりやすくNPOの会計と税務の基礎を学んでもらうことを意図したものです。しかし先ほど述べた考えから、単にこちらの知識を押し付けるのではなく、NPOの実務担当者が今後しっかりとした応用力を身に付けてもらうための土台作りや考え方のヒントを提供することに力点を置きました。従って、中には難しいと思われる部分もあるかもしれません。またいろんな方法を示してその中からNPO自身で選択してほしいとの思いで記述されている部分も多いので、迷われるところも多々あるかもしれません。
しかし、最後まで頑張ってほしいと思います。また1回で理解できなかった場合は何回も読み返してください。あるいは実務で問題にぶつかったとき、該当箇所を再度参考にして下さい。少しでも皆さんの役に立ちたいとの思いで、精一杯の情報を提供したつもりです。
本書は上述の通り、NPOの現場で日々格闘している会計担当者を第一の読者と考えて書かれていますが、NPOに関わる行政の方や、今後NPOを支援しようとする会計・税務の専門家の方や、融資という形でNPOに関わられる金融機関の方などにも参考になるものと自負しております。
本書は私と水谷綾の二人の共著です。私は会計と税務の職業的専門家ですが、彼女は多くのNPO支援の経験を持つNPO支援のプロです。数多くのNPOの現場の声を知り尽くした彼女がいなければ本書を世に送り出すことはできなかったでしょう。会計税務のプロとNPO支援のプロが協力して行った仕事とお考えください。彼女が第1~3章、私が第4~6章を主に書きましたが、お互い何度も原稿を交換し合い、議論を戦わせました。お互いの意見を取り入れて何度も原稿を書き直しました。その意味において、本書のすべての部分について二人で連帯して責任を負うものです。
本書がこのように出版できたことについては、何よりも編集の多くの部分について尽力いただいた岩田朋之さんのおかげだと思っております。ありがとうございました。また大阪ボランティア協会出版部の多くの方に助けていただきました。重ねてお礼申し上げます。
本書が、NPO実務担当者や関係者のお役に立てることを心より願っております。
2004年11月
公認会計士・税理士 岩永清滋
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